7.ウサギは何者?
■税務調査で考えてみると……
ウサギの指導が実ったかどうかはさておき、ウサギとブタ太のここまでのやり取りを、また税務調査に置き換えて見てみましょう。
まず、ウサギの立場を明確にしておきましょう。ウサギは、あくまでもたぬきに頼まれてやっています。たぬきは税務署、あるいは税務職員ですから、ウサギもまた税務職員ということになります。
では、ウサギがブタ太にやっていることは、税務調査なのでしょうか?
結論から言うと、税務調査ではありません。
税務調査と行政指導
税務調査の定義を、もう一度思い出して下さい。税務調査とは、「税務職員が処分目的で行う調査」でした。
たぬきのチェックは、オオカミという国のパンチ(=罰)が待っていますので、税務調査に該当しますが、ウサギのチェックは、間違いを正してあげるだけの単なる指導なので、「行政指導」と呼ばれています。
ですので、税務職員であるウサギとブタ太が接っしているからと言って、必ずしも税務調査にはならないということです。
また、行政指導は、税務調査とは違うので、ウサギが前日に「明日行くわよ」という電話をしないように、税務の世界でも「事前通知」は要求されていません。
行政指導が功を奏した
ウサギの行政指導は、それからも毎週のように続きました。最初は、よく忘れていたブタ太でしたが、ウサギの我慢強い指導の甲斐があって、徐々にブタ太はノートに書くことを忘れなくなっていきました。
「ブタ太さん、よかったね。これでもうタヌキさんやオオカミさんに怒られることもなくなるわね」
素直に喜ぶウサギとブタ太。実はこの後、恐ろしい事態がブタ太を待ち受けているのですが、そんなことを知るよしもありませんでした。